アジ歴ニューズレター第32号

2020年9月30日 発行

新しいコンテンツのご紹介

アジア歴史ラーニング ―デジタル資料で学ぶ日本とアジア―
 アジア歴史資料センターでは、中学・高校の授業でお使いいただける教育コンテンツ「社会科授業用資料リスト」を公開し、多くのユーザーのみなさまにご利用いただいてまいりましたが、昨今の学習指導要領の改訂、アクティブ・ラーニングや学び直しへの関心の高まりなどを受けて、より幅広いユーザーにご活用いただけるようコンテンツを刷新いたしました。

画像1:アジア歴史ラーニング トップページ

 このたび公開した新しい教育用コンテンツ「アジア歴史ラーニング ―デジタル資料で学ぶ日本とアジア―」では、よりシンプルに、近現代における日本とアジアの動きを理解できる仕組みをご用意しました。

画像2:年表ページ

画像3:解説ページ

 トップページにある6つのテーマから閲覧したいテーマをクリックすると、それぞれの年表ページが表示されます。年表では、ⓘマークがある記事をクリックすると、解説ページが表示されます。解説ページでは、それぞれの歴史用語に関する解説のほか、二次利用の際の手引きなど、さまざまな情報をご覧いただくことができます。

画像4:「画像を見る」ページ

画像5:「テキストを見る」ページ

 解説ページの「関連語」をクリックすると、関連性の深い別の解説ページへと遷移します。関連語をたどっていくことで、より体系的な理解を深めることができます。
 また、「画像を見る」をクリックすると関連する資料の画像が、「テキストを見る」をクリックすると関連資料のテキストが表示されます。

 解説は、今後も随時追加していく予定です。コンテンツの充実にご期待ください。

<アジア歴史資料センター研究員 淺井良亮>
「検索ガイド」PDF版公開に寄せて
はじめてのアジ歴 ―階層検索の方法―


→「検索ガイド」PDF版ダウンロード(5MB)

 2019年4月、アジ歴は歴史資料の検索方法のポイントを解説した「検索ガイド:一歩進んだキーワード検索」の冊子版を作成しました。冊子版は、ご要望のあった機関や個人の方に無料で配付してきました。
 本年4月、作成から1年が経過したことと、折しも新型コロナウィルス感染症の感染拡大により外出自粛が呼びかけられたことを受け、「検索ガイド」のPDF版をホームページ上で公開することにいたしました。ご自宅で調査研究を進めている方はもちろん、オンライン授業に取り組まれている先生など、「検索ガイド」PDF版をご活用いただければ幸いです。


階層検索の方法について


 「検索ガイド」では基本的な検索方法として「キーワード検索」を中心に解説しましたが、実はもう一つの検索方法として、「階層検索」があります。この2つの検索方法は相互補完関係にあり、これらを組み合わせれば、資料検索の効率と精度が格段に向上します。そこで、ここからは「検索ガイド」では紹介しきれなかった「階層検索」について、少々見て紹介していきたいと思います。


1.アジ歴資料の概要

 「階層検索」の紹介に入る前に、アジ歴で公開している資料の概要について、実際の画面を見ながらおさえたいと思います。
 アジ歴は、国の機関が所蔵する「アジア歴史資料」のデジタル画像を、インターネットを通じて公開する事業を行っています。2001年に開設され、国立公文書館によって運営されています。
 「アジア歴史資料」とは、「近現代における日本とアジア近隣諸国の関係にかかわる歴史資料として重要な公文書など」のことです。アジ歴では、各機関からこの「アジア歴史資料」のデータ提供を受けて公開していますが、その提供方法には2つの方式があります。アジ歴の「キーワード検索」の画面を開き、画面の左側に並んでいる機関名を見てみましょう(【図1】)。

【図1】「キーワード検索」画面
 方式①は、国立公文書館、外務省外交史料館(以下、外交史料館)及び防衛省防衛研究所戦史研究センター(以下、防衛研究所)の3館から、デジタル画像の提供を受ける方式です。3館からデジタル画像の提供を受け、それをもとにアジ歴で目録情報を作成し、データベースに登録しています(※)。2020年3月末現在、3館から提供された資料の件数及び画像数は、約215万件、約3168万画像に達します。
 方式②は、アジ歴と提携する7つの機関からリンクURLの提供を受ける方式です。【図1】にある7館から、各館が運営するデジタルアーカイブのリンクURLの提供を受けます。そして、それをもとにアジ歴で目録情報を作成し、データベースに登録することによって、アジ歴から各館のデジタルアーカイブに遷移できるようになっています。
  ※国立公文書館については、当初は方式①でしたが、現在は方式②と同様に「国立公文書館デジタルアーカイブ」にリンクする方式に変更されています。


2.「階層検索」とは?

 アジ歴では、このような膨大な資料を検索しやすくするために、各機関で整理された資料のまとまりを参考にしながら、資料全体をツリー型の階層構造によって表示しています。これは、ISAD(G) (General International Standard Archival Description)に準拠したものです。ISAD(G)とは、1994年にICA(International Council on Archives)によって採択された、アーカイブズ資料の記述に関する一般原則を定めた国際標準です。資料を全体から個別へと階層構造によって再現し、各資料の位置づけを明確にしながら、資料に関する情報を26の記述要素によって記載します。
 ISAD(G)では、階層のレベルを、フォンド(fonds)―シリーズ(series)―ファイル(file)―アイテム(item)という名称で表現しています。それをふまえてアジ歴では、「資料所蔵館」―「資料群」―「簿冊」―「件名」と表現しています。そこで、アジ歴の階層について、国立公文書館から提供される資料を例に詳しく見ていきたいと思います。

【図2】階層の展開
 まず、【図2】をご覧ください。左側に表示されている「国立公文書館」をクリックすると、その下に階層が展開され、15件の項目が表示されます。これらが「資料群」です。ここでは、資料を作成もしくは管理していた機関などを元にカテゴリ分けされています。
 次に、上から2件目の「太政官・内閣関係」をクリックしてください。すると、文書ごとに分けられた27件の資料群が展開されます。この中から、12件目の「公文類聚」をクリックしてください。すると、年代ごとに分けられた4件の資料群が展開されます。

【図3】資料群階層の展開
 そこから、例えば「昭和21~26年」をクリックすれば、編ごとに分けられた7件の資料群が展開されます(【図3】)。このように、クリックするたびに資料群が細分化され、下位の階層をたどれる仕組みになっています。

【図4】簿冊階層の展開

 さらに、【図4】をご覧ください。「第70編・昭和21年」をクリックすると、資料群はこれ以上細分化されず、かわりに画面右側の領域に合計80件の項目が展開されます。これらは「簿冊」という階層です。アジ歴に提供されている資料の多くは、複数の資料を1冊に綴じた「簿冊」=ファイルの形で保存されています。アジ歴では階層情報の形で「簿冊」を画面上に再現しているのです。

【図5】件名の一覧

 さらに、1件目の簿冊の標題をクリックすると、7件の資料が表示されます(【図5】)。これらは、簿冊に収録されている個々の資料を「件名」としてリストアップしたものです。「閲覧」をクリックすれば資料画像を、件名標題をクリックすれば詳細情報を見ることができます。

【図6】件名の一覧

 逆に、一つひとつの件名から上位の階層を展開することもできます。先ほどの7件の件名から、いずれかの件名標題をクリックして詳細情報を開くと、「階層」という項目があります(【図6】)。これは、その資料の上位の階層へのリンクを表示したものです。例えば、キーワード検索でたどりついたある件名について、同じ簿冊に収録されている別の件名も見てみたいとき、あるいは同じ資料群に含まれる別の簿冊に移りたいときなどは、「階層」に表示されている各リンクをクリックすれば、上位階層をたどることができます。

 以上のように、資料群をクリックし、簿冊を経て件名へと下位の階層を展開する方法、逆に上位の階層を展開する方法を、「階層検索」と言います。あらかじめ階層の構造を理解していれば、自分が探している情報を含む資料までスムーズにたどり着くことができます。「キーワード検索」に慣れたら、この「階層検索」もぜひ試してみてください。

【参考文献】 アーカイブズ・インフォメーション研究会(編訳)『記録史料記述の国際標準』北海道大学図書刊行会、2001年。

<アジア歴史資料センター研究員 松浦晶子>