『写真週報』には、国策の宣伝や時局意識の喚起とは直接には関係のない記事も掲載されています。ここではその中から、しばしば掲載されている科学記事を紹介します。

 上に掲げた写真は、昭和14年(1939年)6月28日付の『写真週報』71号の記事です。ここでは東京帝国大学動物学教室の朝比奈正二郎がムカシトンボにかんする写真と解説を担当しています。

 上に掲げた写真は、昭和14年(1939年)8月2日付の『写真週報』76号の記事です。ここではマラリアを媒介するハマダラカの卵や幼虫を好んで食べる「タップ・ミンノウ」というアメリカ合衆国南部からメキシコ周辺原産の魚(現在ではカダヤシという名で知られています)についての解説を、日本女子大学の妹尾秀美教授がおこなっています。 この解説の末尾では、「昨今台北付近の河川には、昔から棲息してゐたメダカが殆ど見へないで、タップ・ミンノウ許りとなつたとのことである。恐らく生存競争によつてタップ・ミンノウの方が勢力旺盛で、勝者となつた為であらうと考へられる。此の現象は台湾ばかりかと思つてゐたら、最近に聞いた話に、東京付近の河川の江戸川、中川に於ても同様の現象が見られるといふことである」と記されています。外来種のカダヤシが在来種のメダカを駆逐する可能性については、現在しばしば問題となっていますが、この記事からは、昭和14年(1939年)段階において既にその点が指摘されていたことがうかがえます。

 以上の写真は、上から昭和14年(1939年)12月6日付の『写真週報』94号、同年12月20日付の『写真週報』96号、昭和15年(1940年)1月17日付の『写真週報』99号、同年1月24日付の『写真週報』100号の各号に掲載された「児童科学室」という表題の記事です。とくに上から3番目の『写真週報』99号の記事では、竣工直前の勝鬨橋が可動している様子をみることができます。

 上の写真は、昭和15年(1940年)3月20日付の『写真週報』108号、同年の4月3日付の『写真週報』110号、同じく4月17日付の『写真週報』112号、同5月15日付の『写真週報』116号の各号に掲載された「春の科学」という表題の記事です。『写真週報』にはこの後もしばしば科学関連の記事が掲載されます。



 

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