1945年8月15日正午、ラジオから流される昭和天皇の肉声を通じて、日本の敗戦・降伏が国民に伝えられました。ここに日本政府は直ちに2つの難題に直面しました。1つは広大なアジア太平洋地域に展開していた陸海軍の復員・帰還という問題でした。もう1つは海外日本人の引揚という問題でした。当時、「外地」と呼ばれた朝鮮、台湾、満洲、南洋群島等が敗戦によって一挙に失われたからです。また、「日本臣民」として位置づけられていた朝鮮人や台湾人など異民族の処遇という難問も待ち構えていました。
このインターネット特別展のテーマは「萎みゆく帝国日本」としました。「外地」の喪失による領土縮小だけでなく、「日本臣民」の数も大きく減少し、その活動の範囲も狭まり、「多民族国家」の記憶も敗戦とともに遠ざかっていきます。こうした現象を「萎みゆく帝国日本」という表題に託しています。
アジア歴史資料センターは、近現代の歴史資料を広く内外の利用に供することを目的に、24年間にわたって活動を続けてきました。終戦80周年という節目に、この特別展が未曽有の敗戦の意味を考えるきっかけとなれば幸いです。
国立公文書館アジア歴史資料センター