昭和16年(1941年)11月10日
東郷外務大臣、野村大使に対し、ハル米国務長官の日中和平交渉提案に関し訓令
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資料1:B02030721900 7 昭和16年11月10日から昭和16年11月11日(1画像〜3画像)
「昭和16年11月10日東郷大臣発野村大使宛公電第七五四号(館長符号)(原議)」
「昭和16年11月10日東郷大臣発野村大使宛公電第七五五号(館長符号)(原議)」
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資料2:昭和16年7月10日(『機密戦争日誌 其三』204画像) |
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昭和16年(1941年)11月10日、東郷外務大臣は、野村大使に対し、11月7日の会談におけるハル米国務長官の発言内容への対応方針を訓令しました。ハルの発言とは、日本政府と中国政府(重慶国民政府)との和平への志向を野村に問うものでした(11月7日の野村・ハル会談についての資料解説を参照)。
資料1はこのときの訓令電報です。ここで東郷大臣は、日本政府は日米交渉において従来より支那事変(日中戦争)の解決促進に重点をおいてきたことを述べ、アメリカ側から日中和平についての提案があったことを好ましく捉える姿勢を見せています。また、日中両国政府の直接的な議論は日本の希望するところでもあり、これによって中国よりの駐兵・撤兵問題を日米交渉の議題から除外し交渉の促進がはかれると述べつつ、東郷は、このハルの提案を利用する際には、日中和平成立を日米交渉成立の条件としないこと、アメリカは日中和平を妨げないことの2点を日米間で確約し、あくまで日米交渉の促進を旨とすることを明確にすべきであるとしています。この一方で東郷は提案に対するわずかな警戒心も見せており、アメリカが日中和平の成立を待ち日米交渉を停滞させる意図を持っている可能性を指摘し、野村に対してじゅうぶんに用心をするよう呼びかけています。
資料2の『機密戦争日誌』の11月10日の記述の「三、」では、外務省より通報されてきた、11月5日の御前会議から10日までの対米交渉における措置について「大体良シ」と述べられています。また、駐アメリカ大使館に対して、「乙案」が援蒋中止を要求するものであることが打電されたことを評価し、これによって、「乙案」でも日米交渉は決裂するであろうと指摘されています。
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