日米交渉 資料解説
昭和16年(1941年)10月29日
若杉公使、本国に対し、アメリカ側との折衝より得た観測を報告
資料1:B02030720900 12 昭和16年10月29日から昭和16年10月31日(1〜5画像)
「昭和16年10月29日野村大使発東郷外務大臣宛公電第一〇〇八号(極秘、館長符号)」
画像資料
 昭和16年(1941年)10月29日、若杉公使は本国に対し、アメリカ側との折衝から得た観測を具申しました。
 資料1は、若杉が本国へ具申した電報です。そのなかで、若杉はアメリカが武力による新秩序建設、いわゆる「『ヒトラー』主義」打倒を政策の根本にし、太平洋全域にわたる平和維持を切望しており、局部的な「『パッチ・ワーク』ノ『チグハグ』ノ」協定には応じない態度であると述べています。また、太平洋全域に「無差別待遇」を行なって、各国がすべて均等の基礎において実益を享受することを提議したのは、日本の「共栄圏確立ノ政策」を武力による勢力拡張ととらえているからだ、としています。中国の問題について、アメリカは太平洋全局の平和工作の一部としてとらえる意向があるが、即時実行が不可能であること(中国からの撤兵問題と若杉は推測しています)を日本に強いる考えはないと語っている、と報告しています。総じて、アメリカは「自ラ進ンテ調整ヲ急ク要ナキ立場」であるので、対案を提出してくることはなく、経済的圧迫を堅持して日本の出方を待っているので、日本としては、根気よく交渉を続ける余裕があれば、打開の道がないとはいえないだろうが、急いで局面を打開しようとして「自由行動」にでれば、交渉は断絶することを覚悟せざるを得ないと述べ、新内閣の方針を速やかに決定して、率直に提示する段取りを行なう段階である、と意見を述べています。
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