日米交渉 資料解説
昭和16年(1941年)9月4日
豊田外務大臣、野村大使に対し、日本側提案提示を訓令
資料1:B02030738500 7 外交資料 日米交渉記録ノ部 日米交渉資料(二) 第三次近衛内閣時代(上) 3(25画像)
「昭和16年9月4日豊田大臣発野村大使宛公電第五二八号(館長符号、機械)(写)」
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資料2:B02030738500 7 外交資料 日米交渉記録ノ部 日米交渉資料(二) 第三次近衛内閣時代(上) 3(26画像〜27画像右)
「昭和16年9月4日豊田大臣発野村大使宛公電第五二九号(別電)(館長符号)(写)」
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資料3:B02030738500 7 外交資料 日米交渉記録ノ部 日米交渉資料(二) 第三次近衛内閣時代(上) 3(27画像)
「九月六日我方提案(写)」
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 昭和16年(1941年)9月4日、豊田外務大臣は野村駐アメリカ大使に対し、日本側提案をアメリカ側に提示する方法を訓令しました。
 資料1は、訓令の電報の写しです。ここでは、日本では「近衛メッセージ」の情報が漏洩して以来、日米首脳会談を実現して日米関係調整をすることが緊急の課題になっていると述べられています。また、別電で付された日本側提案について特に説明を要する3点に関する注記があります。1つ目は、三国同盟に関する日本側の見解がアメリカ側を納得させるに足りるものと期待するとあります。2つ目は、資産凍結に関してそれが日本に痛手であるという印象を与えることを避けながら、本件の措置が専門的かつ複雑で「単なる緩和」に終わると一般には理解しにくいこと、アメリカの資産凍結措置が仏領インドシナ進駐への報復措置という印象を与えること、最も目立つ措置であることを強調して、撤廃を求めることとあります。3つ目は、提案中の「軍事的措置ノ停止」という言葉について、それは例えばフィリピンその他に現在以上の兵力を増派し、南西太平洋地域・中国・ソ連極東部に軍事的基地を獲得しないことを指すとあります。
 なお、資料2は、別電で送られた日本側提案の全文(英語)の写しです。
 資料3は、日本側提案の日本語訳全文の写しで、提案の内容は以下の通りです。

(1)日本は以下の諸項を約諾する

(イ)日米の予備的非公式会談ですでに日米合意を得た事項については日本も同意すること
(ロ)仏領インドシナを基地にして近接地域に武力進出をしないこと、北方(ソ連)に対しても同様に理由なく武力進出をしないこと
(ハ)日米の対ヨーロッパ戦争に対する態度は防護と自衛の観念によって決定されること、アメリカのヨーロッパ戦争参戦の場合、日独伊三国同盟に対する日本の解釈及び実行は自主的に行なわれること
(ニ)日本には、日中間の全面的関係回復を努めて実現し、その実現の際には日中間の協定にしたがって中国からできる限り速やかに撤兵する準備があること
(ホ)中国大陸におけるアメリカの経済活動は公正な態度で行なわれる限り、制限されることはないこと
(ヘ)南西太平洋地域における日本の活動は平和的手段によること、国際通商関係における無差別(平等)待遇の原則にしたがって行なわれること、アメリカが必要とする南西太平洋地域の天然資源獲得に協力すること
(ト)日本政府は、日米間に正常な通商関係を回復するのに必要な措置を講ずること、これに関連して日米両国が相互に「レシプロケート」(返礼する、報いる)すべきことを条件として、資産凍結令撤廃を直ちに実施すべきこと

(2)アメリカは以下の諸項を約諾する

(イ)日本側条項の(ニ)に挙げた日本の約諾に関して、アメリカは日本の中国に関する努力に支障を与えるような措置及び行動はしないこと
(ロ)日本側条項の(ヘ)に挙げた日本の約諾にアメリカは「レシプロケート」(報いる)すべきこと。
(ハ)極東及び南西太平洋地域における軍事措置を停止すること
(ニ)日本側条項の(ト)に挙げた日本の約諾に「レシプロケート」し(報い)、日本に対する資産凍結令を直ちに撤廃し、日本船舶に対するパナマ運河通行禁止も解除すること

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